満たされない。
何かを手に入れれば、この気持ちがなくなると思っていた。
新しい服を買っても、美味しいものを食べても、どこかへ出かけても、その場では気が紛れる。でも、ふとした瞬間、胸の奥にぽっかりと空いた空白に気づく。
「何かが足りない」
足りないものを埋めようとして、次々と新しいものを探す。でも、それが何なのかは、はっきりしない。ただ、埋めても埋めても満たされることはなく、また新しい何かを求めてしまう。
周りを見渡すと、みんなそれぞれの生活を送っている。
楽しそうに笑う人、夢に向かって努力する人、家族や友人と過ごす人。
それを見て、「自分は何をしているんだろう」と思う。目の前のことをこなしているはずなのに、どこか実感がわかない。「ちゃんと生きている」と思える瞬間が、どこか遠い。
誰かに話せば楽になるのかもしれない。でも、うまく言葉にできる自信がない。こんな気持ち、わかってもらえるのだろうか。
時間だけが過ぎていく。何かをしなきゃいけない気がする。でも、何をすればいいのか、答えは見つからない。
この満たされない気持ちは、いつからあったのだろう。
幼い頃は、目の前のことをただ楽しんでいた気がする。好きな遊びをして、好きなものを食べて、ただそれだけで満たされていた。だけど、大人になるにつれ、何かを手に入れないといけないという焦燥感が生まれた。
成功しなければ、認められなければ、幸せになれない——そんな風に思い込んでしまったのかもしれない。
でも、本当にそうなのだろうか？
何かを追い求め続けることでしか、満たされることはないのだろうか？
ふと、何もせずにぼんやり空を見上げる。
青い空、流れる雲、風に揺れる木々。
それだけで、ほんの少しだけ心が落ち着く。
この空白は、無理に埋めなくてもいいのかもしれない。
けど、心の虚無感はなくならない。
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